福祉・介護DXインタラクティブ・レポート:身近なヒヤリハット報告からの『小さなDX』

福祉・介護DXインタラクティブ・レポート

身近なヒヤリハット報告から始める『小さなDX』

1. はじめに:福祉・介護DXは「AI導入」だけではない

福祉・介護現場の「DX(デジタルトランスフォーメーション)」と聞くと、AIやIoT、大規模なシステム導入といった、複雑で難しそうなテーマを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。事実、国の政策が示す通り、ICTインフラ整備とデータ利活用は、超高齢社会を迎えた日本の喫緊の課題です。しかし、「AIを使わなければ」と難しく考え始めると、かえってアイデアが浮かばなくなり、何から手をつけて良いか分からなくなってしまう。結局何も始められない・・・あるあるですよね。

しかし、本来のDXは、必ずしも最先端技術の導入から始める必要はありません。むしろ、日々の業務に潜む「ちょっとした不便」を見つけ出し、身近なツールで解決していくことこそ、現場に根付くDXの第一歩です。

この記事では、多くの福祉・介護事業所で日常的に行われている「ヒヤリハット報告」を題材に、Googleフォームという身近なツールを活用した『小さなDX』を提案します。これは、国の大きな戦略に応えつつ、誰でもすぐに始められる、具体的で実践的なDXへの第一歩です。

2. 「ヒヤリハット報告」、まだ紙で運用していませんか?

国の政策がICT化を推進する一方で、福祉・介護現場の業務には、まだ多くの紙が介在しているのが現実です。各種調査からは、福祉・介護現場のICT化がまだ十分に進んでいない状況がうかがえ、多くの事業所で記録や情報共有に紙が使われている実態が見えてきます。特に、ヒヤリハット報告のような重要な業務が紙ベースで運用されているケースは少なくありません。

一般的な紙のワークフローには、非効率なプロセスが多く含まれています。

業務プロセスの劇的変化をインタラクティブに比較

改善前:紙ベースのプロセス

  • 🖨️

    1. 印刷

    報告書の雛形をプリントアウトする

  • ✍️

    2. 手書き

    時間をかけて手書きで内容を記入する

  • 📂

    3. 提出

    上長を探し、直接手渡しで提出する

  • 🔄

    4. 共有

    内容確認後、回覧や会議で共有される

課題:情報共有までに深刻なタイムラグが発生

改善後:デジタルのプロセス

  • 📱

    1. 入力

    気づいたその場でスマホやPCから報告

  • 📊

    2. 自動集約

    報告はスプレッドシートにリアルタイムで記録

  • 💬

    3. 即時共有

    チャットツールに通知が飛び、全職員が即座に把握

効果:リアルタイムな情報共有で迅速な対応が可能に

3. 福祉・介護現場のDX推進で大切な3つのポイント

福祉・介護現場でDXを成功させるためには、技術ありきで考えるのではなく、現場の課題から出発することが重要です。DX推進において大切な3つのポイントをご紹介します。

私たちが推奨するこの「小さく始める」アプローチは、実は国の実証事業などでも採用されてきた成功戦略と一致します。国のICT化支援の取り組みを見ると、まず事業所「内」の業務効率化を進め、その基盤の上に事業所「間」の情報連携へと段階的に発展させることを目指しています。内部業務の改善から始めることは、現場の混乱を避けつつ効果を実感できる、理にかなった戦略だと考えています。

1. 難しく考えない

AIなどの高度な技術からではなく、まずは身近な課題解決に目を向けることが重要です。

2. 課題を見つける

「書類が山積み」「転記ミスが多い」といった具体的な課題を洗い出すことから始めましょう。

3. 小さく始めてみる

利用者様への影響が少ない内部業務から試験的に始め、効果を実感することが成功の鍵です。

4. 解決策:Googleフォームでヒヤリハット報告を劇的に効率化する

ここで提案するのが、導入コスト0円から始められる、Googleフォームを活用したヒヤリハット報告のデジタル化です。Googleアカウントさえあれば、多くの機能を無料で利用できるため、追加の予算を確保することなく取り組めます。これにより、紙ベースの運用が抱えていた課題を劇的に改善できます。

  • 報告はPC・スマホからいつでもどこでも
    Googleフォームを使えば、職員は事務所のPCや自身のスマートフォンから、気づいたその場でヒヤリハット報告を送信できます。わざわざ事務所に戻って報告書の用紙を探し、プリントアウトして手書きで記入するといった手間は一切不要になります。
  • 報告内容はスプレッドシートに自動で集約
    フォームから送信された報告は、すべてGoogleスプレッドシートにリアルタイムで自動的に記録・集約されます。これにより、管理者が紙の報告書を一枚一枚回収し、内容をExcelなどに手作業で転記するといった手間が完全になくなります。データの一元管理と転記ミスの防止を実現します。
  • Googleチャット連携でリアルタイムに情報共有
    さらに強力なのが、Googleチャットなどのコミュニケーションツールとの連携です。設定を行うことで、ヒヤリハット報告がフォームから送信されると同時に、指定したチャットグループに通知が飛ぶようにできます。これにより、上長が内容を確認して回覧するといったプロセスを待つことなく、全職員がリアルタイムでインシデントの発生を把握できます。

具体的なフォームの作成例

ヒヤリハット・アクシデント報告

YYYY/MM/DD
お名前を入力
ヒヤリハット
アクシデント
詳細を記入
実施した対応を記入

※これは実際のフォームを模したサンプルイメージです。

5. なぜリアルタイム共有が重要なのか?

この仕組みがもたらす最大の価値は、単なる業務効率化に留まりません。情報の共有スピードが、サービスの質そのものを向上させる点にあります。具体的なシナリオで比較してみましょう。

【改善前:紙の報告書】

夜10時に利用者が濡れた床で滑りそうになる。夜勤担当者は翌朝、報告書を手書きで作成。日中の上長が午後に内容を確認し、その週のミーティング(3日後)で共有・対策が検討される。
改善サイクル:数日

【改善後:Googleフォーム】

夜10時1分、担当者がスマートフォンからヒヤリハットを報告。即座に全リーダーのGoogleチャットに通知が飛ぶ。夜勤リーダーは10時15分には状況を把握し、夜勤メンバーに注意喚起と床の排水溝の確認を指示。
改善サイクル:数分

改善サイクルが劇的に高速化

この差が、サービスの質を向上させます。

サービスの質を高める好循環

この変化は、以下の好循環を生み出します。

リアルタイムな
情報共有

➡️

迅速な課題発見と
改善策の検討

➡️

改善スピードの
向上

➡️

サービスの質の向上

6. まとめ:DXの第一歩は、身近な業務の「ちょっとした不便」の解消から

DXは、AI導入や大規模システム開発といった「目的」ではなく、あくまで業務を効率化し、サービスの質を高めるための「手段」です。

今回ご紹介したGoogleフォームによるヒヤリハット報告のデジタル化は、追加コスト0円で、今すぐ始められる具体的なアクションです。このような身近な業務の「ちょっとした不便」を解消することから始めることで、現場の職員はすぐに価値を実感でき、より大きなDX推進に向けた自信と推進力を得ることができます。

この『小さなDX』は、単なる業務ハックではありません。国の戦略目標である「良質で安心なサービスの提供」に向けた、現場レベルでの着実な一歩です。まずはあなたの事業所のヒヤリハット報告から、未来の福祉・介護現場を築くための『小さなDX』を始めてみませんか?

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